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GOOD LUCK !!

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Act.8

「言いたいことがあったなら言えよ!ここまでやっといて黙るくらいならそんな哀しそうな顔すんじゃねえ!
オレが、オレがどんな気持ちでいたかもわかんねーで、一人で勝手に暴走して自己完結して、それでほったらかしにするのか!?」

高耶は叫んだ。
傷ついて、怒って、そして哀しくて。

大好きでいつも甘えて信頼して頼って、
なのに拒絶されて無視にも近い扱いを受けて素っ気無く目を逸らされて。
―――心が壊れてしまいそうだ。

内へと溜め込んできた負の感情は、ここでようやく外へ向かって放出され始めた。
逆ギレでもいい。溜め込んできたものをきちんと伝えられるなら。
彼にはもう耐えられなかった。
知らないふりをすることも、それで保たれる表面だけの静けさにも。
すべてがダメになっても、もう目を瞑ってはいられない……!

「馬鹿野郎っ……なおえの、バカ……っ……」

男がガタン、と椅子から立ち上がるのに突っかかるようにして、胸倉を両手で掴んだ彼は、こぼれ落ちそうになる嗚咽を振り払う勢いで詰問する。

「言いたいことがあるならはっきり言えよ!オレがお前の足を引っ張って邪魔してるんだろ?だから怒ってるんだろ!いい加減ガキのお守りなんかごめんだって、そう思ってるんだろ!」
がくがくと相手を揺さぶりながら、首を振り、髪を乱して叫び続ける。

「違う!」
直江が空気を振るわせるほどの咆哮を発して、その両手首を掴んだ。
「嘘言うな!お前、オレを避けてるじゃねーか!オレがいやになったんだろ?顔も見たくないんだろ。目も合わさないで。家にはオレがいるから、帰りたくないんだろ。だからあんな風に外泊繰り返して……っ!」
違うんだ。
邪魔だなんて正反対なのに。あなたと私を隔てるすべての距離を無効にしてしまいたいくらいなのに。
この世で唯二人だったならとさえ望むのに。
あなたは知らない。俺があなたの母親にさえ嫉妬していたことを。
『夜叉』の前パートナーであったあの人をさえ、俺にとってはその対象だった。
あなたを産み育て、愛し愛される唯一人の人間であったあの人。その血の絆は何物よりも堅い。
入り込めない何かがそこにはあった。どんなに焦がれたか。
それでも、あなたは気づかない……

「……あなたは何もわかっていない!どんなつもりで……。俺があなたと顔を会わせたくないのは本当です。ええ、確かに俺はあなたを避けている。こうして一緒に食事するだけでも神経をすり減らすくらいには、あなたに敏感になっています」

「けれど!それはあなたが思っているような理由からじゃない……っ」


いつの間にか壁際に追いつめられ、今度は真正面から顔を突き合わせた直江の瞳には、高耶がこれまでに見たことのなかった光が宿っている。
「なお、っ……?」
じり、と顔を近づけられ、高耶は本能的な恐怖に駆られて声を嗄らした。

「わかりたいならわからせてあげる。どうして私があなたの側にいられなかったか」
「なに、する?やめろ、離せ……っ」
体の両脇にダン、と手をつかれ、完全に腕の中に閉じこめられた格好の高耶が、本気で逃れようと暴れ始める。

「離さない」



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