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しばし、固まってしまっていたご一行(−4人)。
無自覚のマッドサイエンティスト・NAKAGAWAに、意見するだけの勇気を持つものはいないのか。
彼は本当は見た目どおりのいいひとである。誠実・穏健を地でゆく人間なのだ。
しかし、そこに一旦研究が絡むと、どこかで意識がトリップしてしまう。
夢遊病というべきか、別の人格というべきか、普段の本人には記憶がないらしいのだが、何かの加減でこうしてスイッチが入ってしまうと、実験動物の倫理問題などどこ吹く風というように恐ろしげなことを嬉しそうに実験し始めるのだった。
その主な犠牲者となっているのが、みんなの隊長・仰木高耶である。
彼は身のうちに抱え込んだ毒を抑えるという大義名分のもとに、中川の超医学によって人体改造の先進実験体もとい実験台にされているのだった。
そして、その次に甚大な被害を被っているのが、隊長補佐(ただし自任)の橘義明である。
彼は隊長の身代わりに、と規格外に強靭なその体を差し出し、無数の傷跡をのこしている。
中川はなぜか、実験体が橘の場合には隊長に対する以上に外科モードに入るのだった。
そんな中川に何故誰も叛乱を起こさないのかというと、それは単純に他の医者がいないからである。
実際、彼の作る毒消しの効力は他では手に入らないほどのものだった。
高耶の命のためなら、これもまた運命、と今日も体を差し出す直江なのである。
―――聞くも涙、語るも涙(←そうか?)のお話はさて置いて。
ここでふと我に返ったみんなの隊長が、つと首を振って、話を元に戻した。
「ところでこの事態のことだが」
「はい」
「お前ら、頬つねってみろ」
「つねる?」
「そうだ、思いっきり。こんな風に」
怪訝そうな眼差しを返した直江の頬を親指と人差し指とで思いきり強く引っぱった高耶である。
「―――っ!」
気の毒な犬……
―――と思いきや。
「……あれ?」
全く衝撃は来ず、直江はしばし瞬いた。
「何か、全然痛くないんだけど」
「だよな?」
軽く自分の頬を引っぱった他の面子も、同様のご感想。
「やっぱな。これ、なんかの夢だぜたぶん」
高耶は思ったとおりだ、と腕を組む。
「夢ですか?」
「痛くないのが何よりの証拠ってさ。もしかしたらオレがこんな夢見てるのかもしれねーし、そうでなくてお前かもしれね。
何にしても、これは夢の世界だ。悪趣味な管理人が作り出した夢の世界のできごとだ」
「はあ」
「ってことで、つまり誰か一人だけ残ればいいんだろ?そしたら夢も解ける」
「それはそうでしょうが」
「手っ取り早く、さっさとやっちまおうぜ」
「やっちまおうぜ、って、仰木さん…… !? 」
どうやら次にコワれたのは隊長のようである。
おろおろするぷりちー卯太郎をよそに、彼は徐に右手を差し出した。
「?」
不思議がって直江がその手を取ると、高耶は一瞬ぽやんと焦点をぼかしかけたが、すぐに正気に返ってそれを振りほどいた。
「って、誰が握れと言ったッ!?離せてめぇ!」
―――思いっきり怒鳴られて、お犬さまは些か落ち込み気味。
それを故意に無視して、高耶は話を進めた。
「やるって何をじゃ?」
尋ねるのはこの中でおそらく唯一の常識人・嶺次郎。
「決まってんだろ。手っ取り早く数を減らそうと思ったら―――」
高らかに宣言したことには、
「多いもんでしょ=Aやるぞ」
残り、10人??
02/10/04
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